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ヴァシュロン・コンスタンタンが2大クラシックムーブメントを地上から消滅させないために取り組んでいること

"現代のムーブメントの設計は、かつてないほど信頼性の高いものになっている。しかし、それは時計製造の質の低下を意味するのだろうか?

2020年 ヴァシュロン・コンスタンタン新作 レ・キャビノティエ・アストロノミカル・ストライキング・グランド・コンプリケーション - オード・トゥ・ミュージック 6620C/000R-B656

レ・キャビノティエ・アストロノミカル・ストライキング・グランド・コンプリケーション - オード・トゥ・ミュージック
Ref:6620C/000R-B656
ケース径:45.00mm
ケース厚:12.54mm
ケース素材:18K(5N)ピンクゴールド
ストラップ:ブルーのミシシッピ・アリゲーターレザー、アリゲーターレザーのライナー、手縫いサドルステッチ、ラージ・スクエア・スケール、18K(5N)ピンクゴールド製フォールディングクラスプ、ポリッシュ仕上げの半マルタ十字
ムーブメント:手巻き、Cal. 1731 M820(自社開発・製造)、約60時間パワーリザーブ、毎時21,600振動、36石
仕様:ブルー・オパーリン文字盤、ジュネーブ・シール取得、レ・キャビノティエ・モデル ボックス付属。表側に時・分・ミニット・リピーター(任意の操作による時、15分、分)、パーペチュアルカレンダー(曜日、日付、月、閏年) 、高精度ムーンフェイズ、月齢、デイ/ナイト表示、 ランニング・イクエーション・オブ・タイム(連続作動均時差表示)、 日の出・日の入り、昼夜の長さ、 回帰および黄道12宮ディスク(四季、至点、分点、12宮)、裏側に恒星時の時間と分、北半球の透明な天空図、銀河の表示、黄道と天の赤道
限定:ユニークピース、時計裏面に《Piece Unique》と《Les Cabinotiers》の文字を刻印

私が時計の記事を書くキャリアを始めてからずっと、ふたつの孤高のムーブメントが存在し続けている。どちらも超薄型で、ジャガー・ルクルトで生まれたムーブメントだ。私はこの2大ムーブメントとそれが使われている時計について、1920年代に若き日のA.J.リーブリング(1904-1963、米作家、雑誌『ニューヨーカー』の寄稿者として有名)がパリで初めて飲んだブルゴーニュを評したような熱意を込めて書いてきた(正直に言うと、彼のような並外れた明晰さと誇張を排した表現ではなかったが...)。

そんな比較が思い浮かんだのは、人は年齢を重ねるにつれて、物事を若い頃の情熱と比較して好ましくないと思う傾向があり、今の私がまさにそうではないかと考えるからだ。戦後のパリに戻ったリーブリングが、愛用していたカフェがかつての面影を失っているのに落胆したように、私も“昔はよかった”と文句を言ってしまいそうだ。

私は常日頃から時計収集は、時計への情熱の本質的な表現であると同時に、時計製造がなければ時計収集界隈も存在ないということを、コレクターは肝に銘じておくべきだと考えている(逆もまた真なりで、時計収集がなければ、時計製造はすぐに枯れてしまうだろう)。このことから、コレクターはムーブメントについて知っておくべきだと思うが、“知っておくべき”かどうかというのはあまり適切ではない。私は誰かに言われてムーブメントを好きになったわけではない。私にとっては、そこに魅力があっただけだからだ。

それでもやはり、もしムーブメントに興味が持てないのであれば、時計収集の本質的な奥深さを知らずに過ごすことになるだろう。それは、ラ・スービーズ・ソース(ホワイトソース)の作り方や圧縮比とは何かを知らないと、料理や自動車に必要な何かを失ってしまうのと同じだ。もちろん誰にでも好き嫌いはあるが、ムーブメントではジャガー・ルクルトのCal.849とCal.920のふたつが私のお気に入りだ。Cal.849は厚さ1.85mmの超薄型手巻きムーブメントで、Cal.920はデイト表示なしの厚み2.45mmの自動巻きムーブメントである。

いずれも設計自体は古いムーブメントだ。Cal.849は1994年に登場したが、ベースとなったのは1975年のCal.839だ。Cal.920にいたっては、1967年に登場している。

キャリバーナンバーが表す意味は、849が世界最薄の手巻き機械式ムーブメント、920が世界最薄のセンターローターの自動巻き機械式ムーブメントということだ。


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